人が人としてつながる社会の実現に貢献したい
——GSCに入ったきっかけや、学生時代に取り組んでいたことを教えてください。
GSCは、元々メンバーだった佐久間洋司さんに誘っていただき、知りました。佐久間さんは同じ大学で、同じトビタテ!奨学生であったことから、私が当時代表を務めていた国際問題研究会で人工知能についての発表をお願いしたときに知り合いました。
当時、戦争はなぜ起こってどうやって防げるのかを国際システムの観点から考えていたため、国連の研究や、国際法や国際政治、国際経済の勉強をしていました。一方、佐久間さんは技術を用いて共感を生むことができれば、争いを防ぐことに繋がると主張されていて、国際政治にない前向きな議論を、陰ながら尊敬していました。
GSCは「国際」ではなく「グローバル」であり、世界中の地域に拠点があることが先進的と感じ、今でもワクワクします。ちょうど地球規模課題やグローバルな価値を、いかに日本に浸透させていくかを考えていたため、様々なバックグラウンドや専門性をもつ若者が世界規模の緩やかなネットワークで繋がり、未来に向けて自らのエリアにおいて対話し、動いていこうとする機運に感動しました。
——小林さんのビジョンや研究されていたことをお聞かせください。
戦争は禁止された一方で、起こりうる武力紛争をどのように防ぐかについて興味をもち、ロシアのサンクトペテルブルク国立大学へ留学し、国際公共政策研究科における修士では、2014年から始まった東部ウクライナ紛争を国際法の観点から分析しました。また、グローバルで共有される価値に興味を持ち、国連開発計画事務所(UNDP)で国連ユースボランティアに従事し、インドネシアでジェンダー主流化を担当していました。帰国後は、官庁にて日本における地球規模課題解決の推進に従事しました。
そうした経験を経て、今は年齢、性別、国で役割分担して評価する社会ですが、個人の人となりに着目して尊重して気遣い合い、共同していく社会を目指すのが大事であると考えるようになりました。
特に国内においては、男女や国籍により人を認識し、その認識のもと会話することが多いと感じています。一方、さまざまな国や地域で人と接してきて、大事であるのは「その人となり」であり、生まれた国や生まれ持った性別ではないと気づきました。
そこで、「その人となり」を育てる土壌や、五感を刺激する文化、自然、さまざまな固有の価値に目を向け、コミュニティやコミュニケーションの成立に働きかけたいと考えています。そのときキーとなるのは、グローバルな価値ではないでしょうか。「人権」などの堅い言葉を、法律や政治の世界に言葉として留めておくのではなく、日々の生活の感覚にグローバルな価値として浸透する過程に注目していて、その仕組みづくりをしたいと考えています。
「人が人としてつながる」社会とは、性別や国や年齢で役割分担し評価し合うのではなく、各人がその人なりを尊重し、協同し、気遣いあう関係を築いていく社会であると思います。そのような息遣いが全年齢層・全世界に広がれば、国をはじめとするコミュニティ間の武力での争いは、いよいよ正当化されなくなっていくのではないでしょうか。
グローバルな知識や強みを活かした課題解決
——現在のお仕事について教えてください。
企業に入り、公共課題と地域課題を行政だけでなく民間の力と共に解決する官民連携事業を推進しています。 今の会社では各地域に合った事業スキームを構築していて、画一的な事業スキームではなく、それぞれの地域に見合ったまちづくりができるような仕組みづくりを行っています。
国内では、人口減少も進む中、税金もどんどん減る一方です。そこで、図書館などよくある公共施設をどんどん作っていくわけではなく、これからの時代に本当に必要な施設や場所を、地域の人の声を聞いて公共と民間で作っていくプロセスに携わっています。有意義だと感じる仕事ですし、今後も取り組んでいきたいですね。
——GSCでは今後やりたいことはありますか?
さまざまなメンバー間での理解促進を可能とするハブの仕組みを構築し、プロジェクト構築などシェイパー同士の連携を進めてきました。大阪ハブは、前向きで自分軸がはっきりしており、専門も関心もさまざまなユニークなメンバーが多く、非常に刺激的で面白いです。一方、底辺で大事にしている共通の感覚がハブを形作っていると思うので、それを発見し言葉にし、動きにしていくことが楽しみです。
今後は、各シェイパーの得意分野の相乗効果を狙いつつ、他のシェイパーが主導する大阪・関西万博のレポート執筆のほか、ジェンダーやさまざまなプロジェクトに積極的に参加し、対話を重視した活動を国内に展開したいと考えています。自分の強みを活かし、海外ハブとの連携もリードして進めていきたいですね。
——GSCに入りたい方へメッセージをお願いします。
GSCは可能性が無限大です。地域課題やグローバルな課題を解決したり、GSCのネットワークを活かして様々なアイデアを形にできる場であると思います。ぜひグローバルなネットワーキングによって、新たな対話と可能性へ挑戦する、そのようなやる気がある方に、シェイパーになっていただきたいですね。
○小林祐美(民間シンクタンク勤務)
2022.12.10
TEXT BY 蒲生由紀子