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SHAPER INTERVIEW

【INTERVIEW #6】鶴羽愛里〈超高齢社会をより良くする研究、芸術、仕事〉

研究と芸術、仕事を通したグローバルな活躍

——現在のお仕事を教えてください。

外資系企業の経営コンサルタントとして、大阪を拠点にクライアントの多様な課題解決に関するコンサルティング業務を行っています。これまでは新規事業の立案やM&Aなどの案件に関わってきました。学生時代に認知神経科学を研究していたつながりもあって、ライフサイエンス業界の案件に携わることが多いです。研究は博士課程を修了して一旦区切りをつけたのですが、将来的に超高齢社会を牽引するようなライフサイエンス研究やビジネスに関わるクライアントをご支援する形で関わっていきたいと考えています。

グローバルに活躍する上で大切にしていることとして、専門分野以外にも他分野も幅広く学ぶことを積極的に心がけています。特に、芸術(日本文化)について、世界との繋がりの観点において大きな影響を受けました。在学期間中に華道(小原流)に入門して、指導者の資格を取得しています。華道を通して、フランス留学時の日仏文化交流、中国からの留学生や京都市内の小学生へのいけばなの指導やボランティア活動という機会にも恵まれました。直近では、大阪ハブのリトリート(合宿)や、カナダのエドモントンハブのシェイパーの来日時に、日本文化(いけばな)を体験する機会も用意しました。日本文化である華道を通して、座学だけではない経験を通した多文化交流や異分野理解のきっかけになればと思って活動をしています。

——学生時代の活動について詳しく教えてください。

前述した華道を通じた文化交流活動以外に、加齢に関する研究活動にも注力していました。この研究分野を選んだきっかけのひとつに、経済協力開発機構教育研究革新センター(OECD CERI)が出版した「脳からみた学習新しい学習科学の誕生」があります。これを読んで、生涯を通じて脳はどのように学習するのかという点に強い関心を持ちました。在学期間中には、学習の重要な一端を担う記憶とその脳内基盤に対する加齢の影響に関する認知神経科学分野の研究や、高齢者の主観的幸福感(Subjective well-being)と次世代との交流頻度に着目した認知行動学分野の研究を実施しました。加えて、OECD CERIと文部科学省でのインターンシップを実施し、それらの経験は人生の財産となっています。これらの研究活動の集大成として、2023年3月に博士号を取得しています。

——将来実現したいビジョンを教えてください。

より良い超高齢社会づくりに貢献するという志は、大学院時代の研究生活のアプローチこそ異なりますが、今も変わらず持ち続けています。これまで多くの方々からサポートをいただき、様々なスキルや貴重な経験を得ました。仕事でもヘルスケアやライフサイエンス領域のエイジング分野に関連する内容に従事できて、一歩ずつ夢に近づいていると感じています。

今後も、専門性に日本や海外の最新の知見や見通しを掛け合わせて、世界のエイジングをより良くすることに貢献できる人材になるべく邁進していきたいです。GSCは、世界を大阪・関西からより良くするという同じ方向性を持つ大阪ハブや、世界各地のハブのシェイパーたちと出会え、互いのビジョンや課題と解決方法を共有できる環境であり、非常に刺激を受けています。

GSCを通じて養ったソフト面でのスキル

——GSCに入ったきっかけを教えてください。

応募したきっかけはシェイパーの佐久間洋司さんのご紹介で、入った主な理由は、グローバルな課題意識を持ち、自分の研究や仕事とは異なる分野の方々とつながることが、自身の視野を広げるために必要であると感じたからです。海外のハブの方々と同じ課題に対してさまざまな視点からディスカッションできることも魅力的に映りました。

——GSCの活動が仕事に生きることはありますか?

やはり、コミュニケーション・スキルですね。例えば、分野が異なる人に伝える際、噛み砕いて伝えることや前提を整理し理解を深め、チームとして最高の成果を出すマインドは非常に鍛えられました。グローバルチームだけではなく、日本人同士でもそうですが「色々なバックグラウンドの考え方や、働き方が異なっても、不思議ではない」というフラットな立場で聴く姿勢や、意見が対立したときに、どのようにして時間内にまとめるのかなどは、仕事でも応用できている点だと考えます。

また、初対面の方々との短期間で関係構築するという点も仕事と関連が強いです。GSCでは、世界中の約500のハブのキュレーターたちが、スイス・ジュネーブに年1回集まるサミットに参加しました。そこではリーダーシップ、プロジェクト・マネジメント、社会課題(エネルギー、ダイバーシティ)などの各ハブの取り組みを共有し、そこで得た知見を自分のハブに持ち帰り、ハブの更なる発展を促すことが求められます。もちろん、その場でクロスハブのプロジェクト立案といった、コラボレーションの可能性を探る場でもあります。そのため、対話を楽しみつつも、かなり時間を意識して、大阪ハブや大阪・関西の魅力を発信したり、行動したりしたことを記憶しています。

シェイパーに求められる資質と大阪ハブの魅力

——最後に、シェイパーになりたい方へメッセージをお願いします。

多様な経験をされている世界中の方々とつながることができ、ディスカッションの場も多くあるので、そうしたコミュニティや機会を求めている方はぜひ応募して頂けると嬉しいです。加えて、自分の経験やスキルをハブに貢献したいと思ってくれるような利他性がある方が、適性が高いのではないかと感じています。あくまで仕事ではなく、みなさん本業とのバランスをとりながらGSCに参画されていますので、「ハブの活動に自分の貢献できるポイントはここだ!」とひとつでも見えるとより良いのではないかと考えます。

大阪ハブの特色でいうと、やはりグローカル(グローバル+ローカル)な活動と多様な専門性を持つメンバーが最大の魅力です。もちろんグローバルにつながることもできますし、大阪という日本の地域性もしっかり活かせますので、大阪や関西の魅力を発信していきたい方はぜひ検討して頂ければ幸いです。

○鶴羽愛里(経営コンサルタント/華道家)

2023.03.25
TEXT BY 蒲生由紀子