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SHAPER INTERVIEW

【INTERVIEW #4】直井彩茄〈新しい価値観を提供できるデザイン〉

建築に興味を持った幼少期から留学まで

——経歴について教えてください。

幼少期は農家に生まれ、自然の中で田んぼや畑を駆け回っているタイプの元気な子どもでした。いわゆるサザエさん風の昔の日本家屋のおうちで、おじいちゃんとおばあちゃん、両親と妹の家族6人でとても不便な平面プランに悩まされながら住んでいたこともあり、家族との空間の共有の仕方や、自分のパーソナルスペースに関してとても興味がありました。あとは絵を描いたり、図面じゃないけれど図形を書いたりインテリアの模型を作ったりして遊んでいました。そのふたつが重なり「私は将来、建築家になって自分の家を建てて自分の好きな空間を作るんだ」と、自然と建築とインテリアに興味を持ち始めました。

中学校で進路を考える際、普通の高校に行くより工業高等専門学校のほうが自由だし、自分に合っているのではないかと考え、明石工業高等専門学校 建築学科に入学し、15歳からいきなり建築を始めるという、少し普通ではない進路を辿りました。中学時代は成績もトップクラスだったのに、高専に入ると東大に行くような人たちがたくさんいる中、自分は99%の努力で1%の才能の人間だと思い知らされ、底辺を張っていました。ただ、できない科目はありつつも、設計意匠デザインと英語だけは大好きで成績も良くて「私はもうそっちで行くしかない」と思いましたね。そんな中、4年生の頃に学校にも少し飽きてしまい、何か新しいチャレンジをしたいなと思った時期があったので休学と留学を決意、フィンランドはアールト大学に参加留学し、建築学科にあるウッドプログラムという、木と木造建築に特化した1年間のインターナショナルプログラムに参加しました。

留学する進路を取ったもうひとつのきっかけは、明石工業高等専門学校では鉄筋や鉄筋コンクリート造にフォーカスした授業が多く、私の興味のあった木造についての授業がほとんどなかったことです。もっと少し木や木造について学びたいと思い、ウッドプログラムに行くことを決めました。

フィンランドでは初めての海外生活、初めてのひとり一人暮らしで、日本以外の同世代がどういう生活をしているかも見たことがなかったので、多くのとても刺激とインスピレーションを受けて、精神面でも建築やデザイン面でも大きく成長して帰ってきました。
帰国後はやはりもう少し建築を続けたいと思い、京都の大学に編入し、卒業。その後は東京に行こうとしつつもコンクリートジャングルがどうしても私のライフスタイルにしっくりこず、京都のインテリア会社に就職。約5年弱勤めた後、今は独立してフリーランスとしてインテリアを中心に幅広くデザイナーとして活動をしています。

——留学を経て、日本とフィンランドで異なると感じたところはありますか?

デザインや建築の分野でいうと、ひとりひとりが持っている空間に対する意識が高かったです。 どんな食器を使い、どういうご飯を作り、誰と一緒に、どういう照明で、どういう会で食べるのか?ということについて、みんな自然とデザインできるところが、少なくとも私の20年の日本の生活では当たり前でなかったので、 良い意味でも悪い意味でも大きなショックを受けました。

デザインを通して新たな価値観を提供したい

——学生時代の経験を経て、この数年間と独立後はどんな仕事をされているか詳しく教えてください。

インテリアデザインをしている京都の建築事務所に2017年に入社しました。ちょうど海外事務所を設立したばかりの時期だったので海外プロジェクトには多く携わらせていただき、デザインはもちろんのこと、マネジメントやコミュニケーションまでまるっと経験させていただきました。プロジェクトのタイプやスケールも様々で個人住宅からカフェ、レストラン、ギャラリー、ホテルなどひと通り経験でき、とてもありがたく思っています。

独立後はインテリアデザインだけでなく、ブランディングやビジュアル、プロダクトデザイン、またデザインコンサル業務などもさせていただいています。国内外でデザインのプロジェクトに関わらせてもらっていますが、やはり自分が一番得意というか、やりがいを感じるのはインテリアデザインだという気がしています。 今年は新しく自身の家具のラインを始めたいと思い、プロジェクトを進めています

——GSCに入った理由を教えてください。

入らせてもらったのは2020年夏でした。過去5年間会社で働きづめで、全く外の世界と繋がる機会がなかったんです。もちろん会社のお客さんで違う業種の人と会うことはあっても、個人的なレベルで他分野の人との関わりが本当になかったので、異なる専門知識を持った人の考えや意見に触れてインスピレーションを受けたいし、逆にインテリアの業界のことも発信したいと思ったのが一番大きな動機でした。

——実際入ってみてどうでしたか?

皆さん頭キレキレなので、ミーティングに参加するたび、そういう切り口で会話を進めていくのか〜とか、こういう風にプロジェクトを運んでいくと上手くいくのかな〜ど、毎回学びが多いです。 皆さんと個人レベルで関わらせていただくこともあるのですが、自分が知らない世界の情報を最先端の方から聞けることはとてもありがたく、いつも多くを学び、インスピレーションと刺激を受けています。

——今後やりたいことや将来のビジョンを教えてください。

もっとインテリアデザインをやりたいですね。私が大切にしているデザインを通しての価値観であったり、小さくても良いのですがお客さんに対し、きらっとした新しい気づきや今までの生活になかった新しいものを提供できるデザインをもっと行い、その先に何があるのか、何が待っているのかをもっと見たいです。自分自身に対して良い意味でとても期待しています。

あとは、女性として感じることとして建築業界は男性社会で、そういうところが 変わっていけば良いという思いをずっと持っていました。大阪ハブのメンバーでダイバーシティ、ジェンダー平等のプロジェクトをスタートさせて今企画中なので、これから頑張って進めていきたいと思います。 また個人としても写真アートプロジェクトを行なっているので今後、展示を行なっていきたいと思います。

——最後に、GSCに入りたい方へメッセージをお願いします。

ぜひ興味があればホームページから応募してみてください!国内外の素晴らしい方々が所属されていて、学びの多い、自信の活動を発信する大切さや喜びも知ることができるステキなコミュニティーです。一緒に楽しく、活動しましょう!

○直井彩茄(デザイナー)

2022.12.10
TEXT BY 蒲生由紀子