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【INTERVIEW #3】角田弥央〈タンザニアにて、貧困格差の解消を目指して〉

タンザニアで複数事業を展開。タンザニアで暮らすまで

——現在のお仕事を教えてください。

タンザニアに住みながら事業を複数行っています。自分のバックグラウンドが薬学や公衆衛生なので、主に衛生環境の改善と農業やITの雇用創出・人材育成事業を進めています。具体的には、現地の人たちがエンジニア・WEBデザイナー・動画クリエイターとして働けるよう日本企業の仲介役となりながらITスクールを運営しています。
また、都市部ではスマホの普及率は高いですが、仕事で使えるようなPCスキルを身につける機会が圧倒的に少ないので、インターネット環境が整ったレストラン付きのコミュニティスペースを2店舗運営しています。仕事をした経験がない若い人が多いのでそもそも時間通り来てくれないなど、トラブルばかりで大変なことも多いですね。

さらに、NPO的な活動になりますが、タンザニアは村と村の間を移動するため特に医療従事者間で自転車の需要が高いので、日本の中古自転車を持ってきて生活アクセスを良くする活動も行っています。

——タンザニアで暮らすようになった経緯を教えてください。

学生時代、トビタテ!留学JAPANで留学準備をしていた際、エジプトで現地の人と暮らしながら衛生環境を整えたり市場調査したりするインターンシップを行っていました。そこで、私がやりたいことは現地の人達の生活の上での 課題感をヒアリングし、解決するための事業を作ることだと感じたのがひとつのきっかけです。
そこから偶然、日本で出会ったタンザニア人の環境工学エンジニアの方と出会ったご縁を得て、コロナ禍の2020年、そのビジネスパートナーと一緒にタンザニアで事業をする運びになりました。ただ、その後様々 なトラブルが発生し途方に暮れていたところに、救世主のように現れたタンザニア人家族と出会い、ビジネスのサポートをしてくれたパートナーとスピード結婚することになりました。彼も現在一緒にレストランを経営しているのですが、タンザニアで家族ができたからこそ、こちらで生活しようと思えるようになりました。

パートナーには兄弟が8人いて、彼の両親もそれくらい兄弟がいるのが普通なので、もう大家族です。現地の実家に帰ると、家には20人、30人いますね。タンザニアでは家族を大事にする文化があるので、一緒にご飯を作ったり食べたりしています。また、停電や水が足りなくなることが多いのですが、生活に困ったときは家族や地域の人と協力しながら何とか乗り越えています。

GSCを通じて世界中の人と繋がる

——GSCに期待していたことと大阪ハブを選んだ理由を教えてください。

タンザニアでは、ヨーロッパやアメリカの民間企業、国際機関と組んで事業を行っている起業家がとても多いんです。そうしたロールモデルを見てきた上で、GSCはグローバルな繋がりが強いと感じ、入らせていただきました。あと、現地にいると日本人と関わる機会が本当にないので、日本で活躍している方とオンラインでも良いから関わっていたい気持ちもあります。
大阪ハブを選んだのは、一緒に事業をやっている企業が大阪や京都に多いからです。もし可能であれば、そこに他の企業や団体を持ち込んでプロジェクトができたら面白いと思っています。

——GSCに入って得られたこと、入って良かったことがあれば教えてください。

GSCということで信頼してもらえ、アジアやアフリカのメンバーとネットワーキングできているのは大きいです。お金を稼ぐことは事業において大事なので重きを置くべきですが、現地の人々が事業によってどう生活が改善されたかの評価軸、ソーシャルインパクトの部分はまだまだこれからだと感じています。GSCの活動の中で、タンザニアの方と一緒に学びながらそうしたことを行う機会をいただけていることは、とてもありがたいと思っています。

——もう少しGSCで取り組まれているプロジェクトについて教えてください。

大阪ハブのみんなで話した際、ダイバーシティ、特にジェンダー格差が共通で上がってきたトピックでした。日本の知見のある方と一緒に若者の意見を反映したり、提言を持っていけたりするのが理想と思いつつ、ジェンダー格差について議論するのが難しい風潮もあるので、そこを払拭したいと考え、事業を形作っています。現在は、アカデミアでジェンダーに興味がある方々とGSC大阪メンバーで議論する場を何回か設け、そこから新しい何かが生まれることを期待して動いているところです。
また、大阪ハブの誰かのテーマを取り上げて発信する取り組みも進めたいなと思っています。研究者や事業を行っている人、アーティストなど多様 な分野の人たちがいるからこそ生まれるものも多いので、色々な形で発信していけたら良いですね。

10年かけてでも貧困格差を解消したい

——将来実現したいビジョンを教えてください。

サブサハラ地域、特にタンザニアで、毎日1.9ドル以下で生活してる人々の貧困解消と、彼らが経済的・社会的に自立し、自身で事業を作りあげるために、エンパワーメントしていきたいと考えています。貧困格差が開いていかないよう、中間層を増やしていくような土台作りと人材育成を軸に活動しています。産業を生み出すだけではなく彼らの生活を改善し、サブサハラ地域に住んでいる人の文化や価値観を取り込んだ事業設計にしていかないと、西洋式の中で飲み込まれてしまいます。彼らの自立を促すためには、一緒に産業を作りながら彼らの生活を改善することを10年かけてやっていきたいですね。手段は色々あると思いますが、目標に向かって日々もがいています。
このビジョンは自分たちや民間企業だけで動いてもしょうがないので、行政を巻き込んで制度設計から行いつつ、国際協力のあり方もダボスの方々と一緒に考えながら仕組みをつくっていきたいと考えています。 サブサハラの人たちのような問題を改善するためにお互い動いているので、将来的にコラボしてみたいですね。

——最後に、シェイパーになりたい方へメッセージをお願いします。

シェイパーという共通項で世界中の人とつながれるコミュニティは中々ないと思うので、入っていただいたら存分に活用して色々な方と繋がってほしいです。想像できないようなイノベーションは、何かが繋がったときに生まれます。アクションをとったり、日本だけではなく世界中の人と繋がったり、中心的な活動をすると自分のキャリアにもつながってきます。GSCを活用してほしいというのは、ぜひコミュニティのメンバーとして伝えたいですね。

○角田弥央(株式会社Darajapan/NPO Be&Co Japan)

2022.12.10
TEXT BY 蒲生由紀子